📒この記事でわかること
- 砂糖を使わず、みりんと玉ねぎの甘みで仕上げる親子丼の作り方
- 醤油を入れるタイミングと、卵を2回に分けてとじるコツ
- 10人分のアタマを作って、晩酌のアテや丼として楽しむ方法
オヤジが旅立ってから、もう6年になる。
昭和の頑固オヤジだったけれど、台所についてだけは当時としては珍しい考えの持ち主だった。
「男も台所に立て」「好きな酒の肴と自慢できる料理くらいは自分で作れ」というのが口ぐせだったのだ。
実際、魚をさばいて刺身にし、そばを打ち、ラーメンはスープから仕込んでいた。
そんなオヤジが休日の昼、得意げな顔でよく作っていたのが親子丼だった。
なぜカツ丼でも牛丼でもなく親子丼なのかと聞くと、カツ丼は友達のとんかつ屋で食べるもの、牛丼より牛すき焼き丼のほうが好き、そして親子丼だけは自分で作るのがいちばんうまい、という返事。
いかにも頑固オヤジらしい理屈だ。
親子丼の始まりは明治20年代、東京・日本橋の軍鶏料理店「玉ひで」で、鳥すきのシメに残った具と割り下を卵でとじ、ご飯にのせたことだと言われている。
深川丼や牛丼が働く人の手早い食事として広まったのに対し、親子丼ははじめから出汁の旨みを卵でまとめる料理として生まれたわけだ。
オヤジの親子丼も、材料は鶏もも肉と玉ねぎと卵だけ。
それでも「砂糖は使わない」「醤油は後から入れる」という2つだけは、決して譲らなかった。
今回は、その味を忘れないうちに文字に残しておくことにした。
砂糖を使わない親子丼の作り方

実践レシピ
だし汁とみりん、玉ねぎの甘みで鶏肉を煮て、醤油はあとから加えて香りを立たせる。
最後に卵を2回に分けて流し入れ、余熱でふんわりとじるのがオヤジ流だ。
調理時間の目安は、下味の30分を含めて約50分。
🥬 材料(作りやすい分量)
- 鶏もも肉:1000g
- 塩:小さじ2(約10g、下味用)
- 酒:大さじ2(約30ml、下味用)
- 玉ねぎ:大2個
- 卵:20個
- だし汁:水400ml+顆粒だし小さじ1
- みりん:大さじ20(約300ml)
- 醤油:大さじ10(約150ml)
- 三つ葉:適量(お好みで)
- 温かいご飯:適量(丼にする場合)
🥣 使用する道具
- 蓋つきの深型フライパン
10人分を一度に煮るなら直径28cm以上が目安。
わが家は2つのフライパンを駆使しているよ。
🍳 作り方

- 鶏もも肉は一口大のそぎ切りにし、塩と酒をもみ込んで30分ほど置く。玉ねぎは薄切りにする。
- 卵はボウルに割り入れ、菜箸で白身を切るようにほぐす。全体を混ぜすぎないのがポイント。
- フライパンにだし汁とみりんを入れ、玉ねぎを散らすように広げる。ここではまだ火をつけない。
- 玉ねぎの上に鶏肉を皮目を下にして並べ、中火にかける。
- 煮立って玉ねぎが透き通ってきたら鶏肉を裏返し、醤油を全体に回しかけて5分ほど煮る。
- 溶き卵の7割を、フライパンの縁から円を描くように流し入れ、最後に中央へ回し入れる。
- 卵が固まりはじめたら残りの3割を回し入れ、三つ葉を使う場合はここで散らす。
- 蓋をして火を止め、2分ほど余熱で仕上げる。
🏷️ 失敗しないコツ

醤油は鶏肉を裏返してから加える
最初から醤油を入れると、塩分で玉ねぎが締まって甘みが出にくくなる。
砂糖を使わないレシピだからこそ、まずはだし汁とみりんで玉ねぎの甘みを引き出し、醤油は最後に香りをまとわせる役に回すのがコツだ。
火加減は中火で「クツクツ」をキープ
早く仕上げたくて強火にすると、鶏肉が縮んで固くなりやすい。
煮汁の表面が軽く揺れるくらいの火加減を保とう。
卵は混ぜすぎず、白身のコシを切る程度に
しっかり溶きほぐすと、とじたときのふんわり感が出にくい。
白身だけが一気に流れ込まないよう、菜箸で切るようにほぐすくらいがちょうどいい。
卵は7割と3割の2回に分けて入れる
一度に全部入れると、火の通り方にムラが出やすい。
1回目でしっかりとした土台を作り、2回目は余熱でとろりと仕上げると、食感に変化が出る。
三つ葉は火を通すタイミングを選ぶ
三つ葉は少し熱が入ってはじめて香りが立つ。
作ってすぐ食べるなら2回目の卵のあとに、温め直して食べるなら温める直前にのせよう。
どれも順番とタイミングの話なんだけど、そこを守るだけで砂糖なしでもちゃんとうまくなるよ!
楽しみ方・食べ合わせ

やっぱりいちばんは、熱々の白飯にアタマをすべらせるようにのせた丼だ。
だしの甘い香りに、後から入れた醤油の香ばしさが重なり、つゆのしみたご飯と一緒に鶏肉をほおばると、ぷりっとした肉の旨みと卵のまろやかさが広がる。
アタマだけを小鉢に盛れば、そのまま晩酌のアテにもなる。
わが家では、もつ煮込みや、きゅうりの醤油漬け、ミニトマトときゅうりの塩昆布和え、蕪の甘酢漬けといったさっぱり系の作り置きと一緒に並べた。
甘辛い親子煮に酸味のある箸休めを合わせると、酒がどんどん進む。
翌日以降に温め直すと卵はとろとろではなくなるが、しっかり火の入った卵もまた乙なもの。
これもオヤジの受け売り。
作り置きで注意していること

親子丼のアタマは傷みやすいので、わが家では翌日までに食べきるようにしている。
その場合も、以下の点を注意してほしい。
- 料理を十分に冷ましてから冷蔵庫へ入れる
- 清潔で乾いた保存容器を使用する
- 取り分けるときは、清潔な箸やスプーンを使う
- 蓋の内側に水滴がついていたら、清潔なキッチンペーパーで拭き取る
- 残りが少なくなったら、清潔で乾いた小さな容器へ移す
- 長時間室温に置いたものは、保存容器へ戻さない
- 少しでも異変を感じた場合は食べない
よくある質問

砂糖なしだと甘みが足りなくない?
みりんをたっぷり使い、玉ねぎを醤油より先に煮て甘みを引き出すので、砂糖なしでもやさしい甘さに仕上がります。甘めが好きな場合は、みりんを少し増やして調整してください。
少人数分だけ作りたいときは?
すべての材料を同じ割合で減らせば作れます。たとえば5分の1にすると、鶏もも肉200g、卵4個ほどで2人分の目安になります。煮汁が少ないと早く煮詰まりやすいので、小さめのフライパンを使い、様子を見ながら火加減を調整してください。
鶏むね肉でも作れる?
作れますが、もも肉に比べて火が通ると固くなりやすいです。そぎ切りにして下味をしっかりつけ、煮込み時間は短めにするのがおすすめです。
まとめ
砂糖を使わず、醤油は後から入れる。
オヤジがこだわったのは、たったそれだけのことだった。
でも実際に作ってみると、その順番ひとつで玉ねぎの甘みも醤油の香りも変わるのがよくわかる。
できあがった親子丼を前にすると、湯気の向こうに得意げなオヤジの顔が浮かんでくる。
台所に立つ理由なんて、大切な人に「うまい」と言ってもらいたい、それだけで十分なのかもしれない。
「お義父さんのこと思い出すね」とほほ笑む妻と、今夜も乾杯だ。